プリンの冒険 　　第6回 ムースと二人で歩くことはプリンにとって楽しいことでした。 ここまでずっと一人で歩いてきたので話し相手ができたことがうれしかった のです。 ムースは時々プリンに話しかけてきました。 この石は何かに似ているとか、この壁の色は趣があるとか、プリンにはあまり 興味がないことでしたが、それでもときどき相槌を打ちながら聞いていました。 内容が難しすぎてよくわからないときは質問をしたりもしました。 「それはつまり、あのぉ、イカでタコを釣るようなもの？」 「それを言うならエビでタイを釣るでしょ！」 「あ、そうでしタイ。てへ。」 「てへ、じゃない！」 ムースはちょっとムスッとして言いました。 そんな会話を交わしながら二人が洞窟を歩いていると、目の前に湖が広がり ました。 「これはかなり大きいわね。」 ムースは言いました。 この湖を渡らないと先へ進めそうにありません。 しかも湖はかなり深いように見えます。 「何かいい方法はないかしら。」 ムースはプリンの方を見ました。 「そうだなぁ、泳いで渡るってのは？」 「バカね、この距離を泳いで渡るのは北島康介でもないと無理よ。彼ならスイスイ 渡るわよ。超気持ちい〜ってね。」 「そうかー、泳いで渡るのは難しいか。じゃあ、あそこのボートを使うってのは どう？」 プリンが指さす方を見ると一艘のボートが岸につながれていました。 「うそぉ！なんでこんなところにボートがあるのぉ？話が上手く出来すぎじゃな い？」 ムースは驚いたように言いました。 「だってこれは小説だから。何でもありだから。」 プリンはすべてを知っているかのようにそう言いました。 そして二人はさっそくそのボートに乗り、湖を渡り始めました。 ボートが湖の真ん中ほどにさしかかったときです。 突然ボートの周りに無数の泡が立ち始めました。 「あわわわ、これはいったいどういうこと？」 プリンは少しあわてた様子で聞きました。 「誰かが湖に花王のバブを入れたようね。ゆずの香りタイプだと思う。」 それを聞いてプリンは少しほっとしました。 「さあ、あと半分よ。頑張って漕いで。」 ムースにそう言われ、再びプリンはボートを漕ぎだしました。 そしてついに対岸にたどり着きました。 「あー、疲れた。」 そう言うとプリンはその場に座り込みました。 「少し休みましょうか。」 ムースもプリンの横に座りました。 そして持ってきていた柿の種を取り出すと、お一つどうぞと言ってプリンにも渡し、 自分でもポリポリ食べ始めました。 「やっぱりピーナッツと柿の種の割合は50%ずつだわ。」 ムースがそう言うとプリンもうなずき、こう言いました。 「うん、でも柿の種100％もおいしいよ。」 それから二人はしばらくそこでのんびりとし、休養十分と思われる頃、ムースが 立ち上がり、言いました。 「さあ、行くわよ。この先も何があるかわからない。気をつけて進みましょう。」 そうして二人はまた洞窟を先に進み始めました。 つづく

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